
―フェリシモの商品・サービス企画の根底にあるサステナビリティ・ストーリー―
事業性、独創性、社会性が交わり合い生み出されるフェリシモならではの商品やサービス。 この連載では「社会性」にフォーカスし、プロジェクト担当者たちの想いをお伝えしています。
前編では、フェリシモの森基金の歩みとともに、自然をめぐる課題の変化や、新商品「樹から生まれた縁樹の糸で紡ぐ 糸曼荼羅(まんだら)制作キットの会」(*1)に込めた思いを伺いました。
後編では、田浦さんが考える森との向き合い方や、お客さまと共有したい時間、そして森基金がこれから育てていきたい未来について、さらに詳しくお聞きします。
話し手:田浦紀和子さん
聞き手:フェリシモしあわせ共創事務局
【インタビュー前編はこちら 】
*1:「縁樹の糸(えんぎのいと)」は日本各地の樹木を繊維に紡ぎ、樹木糸やファブリックや雑貨を展開している大阪発のプロジェクト・ブランドです。
作る時間にも素材にも意味がある

「樹から生まれた縁樹の糸で紡ぐ 糸曼荼羅(まんだら)制作キットの会」の最大の魅力は、素材と行為の両方に物語があることではないでしょうか。
「樹木糸」は繊維メーカーでもある「縁樹の糸(えんぎのいと)」が開発した、木材を原料にした再生繊維。端材や倒木、間伐材などを微粒子化し、いったんシート状にしたものを裂いて糸にしていく、独自の製法により木が糸へとつむがれます。くらしの中で木のぬくもりを感じられるような、糸や布づくりにこだわっているそうです。
「縁樹の糸」の開発者もまた、森や木への強い思いを持ち、その魅力を広げようとしている方。素材の背景にある思想に田浦さんが共感したことも商品化を後押ししました。

田浦:実際に曼荼羅づくりを行なってみると、没入感を味わえると思います。ただ楽しいという感覚の延長線上に森のことを感じていただけるとうれしいです。
「縁樹の糸」にふれてみると、木の風合いを残した独特の手ざわりが特徴的です。国産の木材を使ったキットの台木からも、ほのかに木の香りが漂います。
木の糸にふれ、自分の内側に意識を向ける時間そのものが、森との距離を少し縮めるきっかけになる。そんな思いが、このキットには込められています。
森と人との関わりを育てる支援へ
森に関する学びや出会いを重ねるなかで、田浦さんは、森基金の支援先や森活部の活動の方向性も少しずつ広げていきたいと感じるようになったといいます。
田浦:フェリシモが基金活動を行ううえで大切にしているのは、お客さまの思いに寄り添い、その願いがきちんとかたちになるよう支援を続けていくことです。だからこそ、これまでの植林活動に加えて、森と人との距離を少しずつ近づけていくような取り組みができないかと考えています。
たとえば、森林と再びつながるきっかけとして、薪割り体験や森林教室のような活動があります。森に入ること、木にふれること、暮らしと森との関わりを知ること。そうした一つひとつの経験が、人の意識や行動を変える入口になっていくのではないでしょうか。

また、本社を置く神戸市では、「森の未来都市 神戸」というコンセプトのもと、行政、企業、市民が一体となって森林や里山を次世代につないでいくための取り組みが進められています。フェリシモもこの動きに歩調を合わせながら、ともにできることを探っています。
田浦:さまざまな人たちと関わりながら、森について考える場や時間を一緒につくっていくことも、フェリシモ森活部だからこそできることなのかなって。
森と人との新しい関わり方を、少しずつ育てていくこと。森基金は、そんな支援のあり方を模索し続けています。

答えを届けるのではなく、考える時間を共有したい
田浦さんが森活部や森基金を通して育てたいのは、「自然にいいことをした」という達成感だけではない、お客さまとの関係です。
田浦:大きな環境課題にすぐ答えを出すことはできなくても、商品やカタログを通して、フェリシモとつながってくださっているお客さまに、森や自然のことをともに考えるきっかけをつくれるのではないかと考えています。

実は田浦さんは、入社して間もないころ、環境への思いをかたちにしようと挑戦したことがありました。ポリエステル素材をリサイクルする取引先との出会いをきっかけに、着終えたフリースのジャケットを返送していただき再資源化する企画を試みたことがあったのだそうです。
当時はまだ、アップサイクルの取り組みが今ほど広がっておらず、事業として続けていく難しさもありましたが、それでも、そうしたテーマを心のどこかで持ち続けてきたことが、今の森活部の活動にもつながっています。
田浦:フェリシモのおもしろいところは、買い回りしているうちに、視野に入っていなかったものにまで出会える偶然性だと思うんです。そういう思いがけない出会いを通して、森のことを知っていただくことができるといいですよね。
森とともにある感覚を、少しずつ広げていく
田浦さんは、森基金や森活部の活動を、これからもっとお客さまと一緒に広げていきたいと考えています。
たとえば、「樹から生まれた縁樹の糸で紡ぐ 糸曼荼羅(まんだら)制作キットの会」を使ったワークショップを開いたり、木の糸の開発者を招いて話を聞く場をつくったり。
商品を届けるだけでなく、そこからさらに体験や対話へとつなげていく可能性も広がっています。
さらに、神戸の木を生かした商品づくりにも挑戦していきたいという野望もあります。すぐにかたちにすることは難しくても、地域の森や木と関わりながら、方法を模索していきたいと語ります。

最後に、変わりゆく自然環境の課題に向き合うなかで、私たち一人ひとりにできることについて伺いました。
田浦:森には行けなくても、公園で木漏れ日を感じたり、鳥の声を聞いたり。そうやってまずは自然とつながる感覚を思い出すことだと思うんです。
それに、そういう感覚を持ち直すことで、情報過多で疲れ気味の現代人も元気になれるのではないかなって。
人にも自然にも寄り添う、田浦さんらしいしなやかな発想です。森活部が目指しているのは、大きな答えを示すことではなく、自然とともにある感覚を少しずつ取り戻し、考え続けていくこと。その積み重ねは、森の未来だけでなく、私たち自身の暮らしを見つめ直すきっかけにもなっていくのかもしれません。

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